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初めに

地殻を構成する物質の90%以上を占めるシリカあるいはケイ酸から、地球上
で2 番目にありふれた元素であるSi が作られます。太陽光下でキラキラして
いる砂がシリカです。シリコンは自然界や工業製品の中に、多くの化合物
として見つけることができます。半導体技術にとって最重要材料である
シリコンは半導体デバイスのプラットホームになっていて、ドーパントや
溶存酸素など精密で均一にコントロールされたシリコン単結晶として
使います。原材料シリコンから半導体プロセスで使用可能な単結晶基板
を生み出す最初の作業は、比較的純度の良い二酸化ケイ素
採鉱です。ほとんどの場合、二酸化ケイ素は炭素と混ぜ合わされて、1500℃
から2000℃の電気炉内で炭素の還元作用によりシリコンが作られます。
なるべく純粋な砂を選択(産地を限定)することによって、純度97%または
それ以上の工業グレードのシリコンが得られます。最終的にはこのシリコン
が半導体で使われますが、それまでには不純物濃度をppb ( 10 億分の1 )
レベル以下になるまで精製しなければなりません。

シリコン結晶成長

溶かしたシリコン ( 液体状シリコン ) から結晶成長を行う基本的な
テクニックは、Czochralski 法です。シリコン単結晶成長方法として最も進み、
多く使われているのが、Czochralski プロセスです。このプロセスの名前は、
金属の結晶化率の調査中 ( 1916 年 ) にこの手法を発見したポーランドの
科学者 Czochralski に因んでつけられた名前です。半導体産業において
多くの割合 ( >90% ) の単結晶シリコンが、Czochralski プロセスで用意
され、ほとんどすべての集積回路はこの方法で作られたシリコン結晶を
使っています。

スタート材料

比較的高純度のケイ石と呼ばれる砂  がシリコンのスタート材料
です。この砂はさまざまな形態の炭素 ( 石炭、コークス、木くずなど ) と
ともに電気炉に入れられます。様々な化学反応が起こりますが、途中工程
を省くと下記の反応になります。

この工程で、純度97%の工業グレードのシリコンが作られます。
次にこのシリコンを粉砕して、塩酸(HCl)と反応させて、三塩化シラン
を形成します。 

三塩化シランは常温では液体です ( 沸点31.8℃ )。この液体を分溜して
不要な不純物を取り除きます。精製された は、水素と
還元反応させることにより、電子グレードシリコン ( EGS ) となります。

シリコン析出の核になる加熱シリコンロッドを含む反応装置の中で、この
反応は起こします。高純度多結晶電子グレードシリコン ( EGS ) は、
半導体グレード単結晶シリコン作成の原材料になります。
純EGSの含有不純物濃度はppb レベルになります。

Czochralski プロセス

大きく丸いシリコン単結晶を成長させる重要なテクニックの一つにCzochralsk i  ( CZ ) 法があります [1]。 溶融物から種づけされた結晶が、
温度形状、円筒形を保つように回転しながら引き上げられます ( Fig.5-1 )。


種結晶は溶融物に浸けられ、溶融物は少量の結晶が固体化するまで降温
します。次に種結晶は1 時間に1~10mm というゆっくりとしたスピードで
引き上げられます。溶融温度もゆっくり下げられ、そのため結晶の直径が
増加します。狙いの直径に達したら降温を止めます。その直径を保ったまま
望む長さまで成長させます。ただしCZ 法は異なる元素を含むとき、溶融物の
変質が起こります。この対策として、溶融物内の元素が蒸発しようとするのを
防ぐ液体封入法が使われます。封止剤は、低蒸気圧、低粘度、密度は
溶融シリコンより低くなければならず、また溶融シリコンや坩堝と混ざったり
反応したりせず、さらに多結晶シリコンの変質が起こる前に溶ける材料で
ある必要があります。というわけで一般に  が封止剤として使われて
います。

フローティング‐ゾーン プロセス

通常のCZ 法で得られる結晶よりもさらに高純度(高抵抗)なシリコンを得る
ために使われるのが、フローティング-ゾーン(FZ) プロセスです。
フローティング‐ゾーン プロセスの説明図をFig.5-2 に示します。


底部に種結晶を取り付けた高純度多結晶ロッドが垂直に回転しながら
保持されます。このロッドは石英管に不活性ガス( Ar ) とともに
封入されています。
RF ヒータがロッドの下部から上部まで移動し、RF ヒータのある場所の
ロッドは溶融します、溶融ゾーン幅は数cm です。溶融ゾーンは結晶の
成長の固体表面との張力により保持されます。フローティング‐ゾーンの
上昇に従って、ゾーンの後退面で単結晶シリコンが冷却され、種結晶の
延長として成長します。
この方法はCZ プロセスよりも効率よく精製できるために、CZ法で作成する
よりも高い抵抗のシリコンが得られます。さらに坩堝が不要なので、CZ の
ように坩堝からのコンタミ ( 酸素等 ) がありません。
現時点 ( 2017 年 ) では、FZ 法は主に高抵抗シリコンを必要とする、
高電圧、高電力デバイス用に用いられています。

ウエハ形成

結晶成長後、最初の加工作業は、インゴットの種結晶部分と最後に結晶化
した部分の切り離しです。 次に、シリコン結晶が所定の直径になるまで
インゴット表面を削ります。その後、平面あるいは溝がインゴットの長さ方向
へ削り出されます。溝はノッチと呼ばれ、直径200mm 以上のウエハで
使われます。理由は直径が大きくなるということは円弧の曲がり具合が
ゆるくなり、より外周近くまでチップを作ることができるので、オリフラを
使わなくなりました。チップを多く取りたいのは150mm 以下でも同じなので
第2 オリフラが無く、第1 オリフラもSEMI 規格よりも短いJEITA 規格が
日本では多く採用されています。なお第1 オリフラやノッチは結晶の方向を
定めます。第2 オリフラにも役割がありますが、これがあると装置が
ミスアライメントを起こしたりします。製造現場ではオリフラやノッチから
何らかの情報を得たりはしません。製造装置がウエハをそろえるのに使う
だけです。
ここでインゴットは、ワイヤーソーあるいは、内刃ソーで切断されます
(Fig.5-3)[2]。切断により4つのウエハパラメータが定まります。
 1:面方位(<100>、<111>等)
 2:ウエハ厚(0.5-0.8mm ウエハ径が大きいほど厚い)
 3:テーパ、端から他方の端までの厚みの変化
 4:ボウ、ウエハの湾曲を示しウエハ中心からウエハ端に対して測ります。



切断後、両面とも平坦性が標準で2μm 以内に収まるように研削されます。
通常研削後にはウエハ表面やエッジに汚染やダメージが残ります。汚染の
方はウェットエッチングで取り除くことができます。最終的に研磨することで
鏡面に仕上げます。このとき、CMP(Chemical-Mechanical Polishing)を
用いて研削でできた破砕層やダメージ層も取り除かれます。結果として強度
が増しますので、300mm ウエハやSiCウエハは裏面も鏡面仕上げにして
います。参考までに125、150、200、300、および450mm の鏡面ウエハの
SEMI 規格をTable 5-1 で示します。なお450mm ウエハは2015 年に実用化
されると聞いていましたが、まだ現れていません(2017 年4 月)。



--- 付記 ---

研削と研磨の違い

研削後の表面を電子顕微鏡で観察すると、クラックや隆起や凹み
( これらは尾根や谷のようにみえます ) が見えます。最上部の隆起と
凹みのある層は破砕層と呼ばれ、その下の層は欠陥層でマイクロクラック、
転移、スリップ、ストレスが残っています(Fig.5-4)。
これらの層はウエハプロセス前に完全に取り除いておく必要があります。
研削の砥粒をより小さくしても、ダメージサイズを小さくするだけで、完全に
ダメージをなくすことはできません。実際ダメージはシリコンの削りカスの
特徴を示していて、これは、砥粒がシリコンウエハの破砕強度を超えた圧力
を受けてウエハ表面を転げまわるためです。 
一方、研磨の化学的メカニカルプロセスでは、破砕は起こりません
(Fig.5-5)。
さらに高解像度の電子顕微鏡でみても、研削後のような破砕層を見つける
ことはできません。



参考文献
[1] S. M. SZE, M. K. LEE, Semiconductor Devices Physics and Technology,
   John Wiley & Sons Singapore Pte. Ltd. (2013)
[2] http://www.pveducation.org/pvcdrom/manufacturing/wafter-slicing